衛生的な現代の生活。
日常生活で私たちは、抗菌や除菌に頼ることが多くなりました。
しかし、極端に衛生的な環境を維持することが必ずしも人体に良いとは限らないようです。
むしろそれが私たちの身体や精神に多くの悪影響を与える可能性があります。
本記事では、菌が私たちの健康にどのように影響を与えるのか、そしてなぜ適度な”不衛生”が重要なのかを探ります。
菌は敵なのか
宿敵のように見なされる”菌”
ドラッグストアなどでよく目にする「99.9除菌!」の文字。
石鹸や、スプレー、ウェットティッシュも、あらゆる製品がこの定型文を謳い、目に見えない小さな菌を敵視します。
菌と一括りに言っても、多種多様な菌が存在します。
確かに人体には取り込まない方がいい菌もありますが、取り込んでも害が無く、むしろ取り込むべき菌も存在することが最近の研究ではわかってきました。
しかし日々の生活において、いつのまにか私たちは全ての菌をまるで宿敵のように扱います。
目に見えない菌を恐れ、過度に神経質になる潔癖症という概念まで存在します。
人体と菌の共生関係
実際には太古より人間は腸内に約1000種類もの細菌を飼っていて、これらの菌が人体を適正にコントロールし、健康を支える役割を担っていたとされています。
この腸内で飼育される菌のバリエーションを適正な状態に保つことで、免疫力が上がり病気などへの感染に強くなります。
新たな病原菌が体に入ってきても、菌に刺激された免疫細胞が病原菌と戦うことでその増殖を防いでくれます。
腸内で飼育する菌が、人間の免疫力の強さに直結します。
私たちは、菌が人体と共生関係にある大切な相棒としての認識を持つことが大切です。
菌は腸内で人間の免疫力を支える、重要な相棒。
過度な抗菌・除菌のデメリット
現代は過度に衛生的であることが善と見做され、除菌を正と考える人も多くいます。
ですが実際には過度な抗菌・除菌は人間にとってマイナスになります。
実際にどのようなデメリットがあるかを見てみましょう。
免疫系の弱体化
過剰な抗菌や除菌は、腸内細菌のバランスを崩す可能性があります。
除菌によって人体に有用な菌まで人体に入ってこなくなってしまうためです。
免疫細胞は腸内細菌によって鍛えられますが、過度な除菌はその鍛える機会を奪います。
つまり極端に衛生的な環境で生活することで、結果的にそれが免疫力の低下を引き起こし、病気やアレルギー体質を生み出す可能性を高めてしまいます。
代謝機能の低下
前述の免疫系に少し似てますが、病気やアレルギーに問題がなくとも、代謝機能の低下も引き起こします。
腸内細菌は胆汁酸代謝やコレステロール代謝など、多くの代謝機能に関与しているため、過剰な抗菌・除菌がされればその影響を受けてしまいます。
こうした代謝機能の低下は、肥満や糖尿病のリスクを高め、日常においても活力や集中力の低下に繋がります。
ストレスの増加
衛生状態に過敏になりすぎると、精神的なストレスが高まります。
特に菌は目に見えないため、一度過敏になればどこまでも除菌しないと気が済まないという方も多く、除菌作業も単純に負担になるでしょう。
また衛生的に保たれた自宅は良くても、外に出る度に落ち着かないかもしれません。
どこまで除菌すればいいのか、というのも明確なラインもなく、自己満足の範疇になってしまいます。
過度な除菌は病気やアレルギーのリスクを高め、代謝機能の低下やストレス増加を引き起こす。
適度な”不衛生”を受け入れよ
過度な除菌のデメリットを見てきたように、私たちは適度な“不衛生”を受け入れることが推奨されます。
適度に菌と触れ合う環境は、過度な除菌によるデメリットを解消することができます。
つまり適度な不衛生は、健康状態の改善やストレス低減につながり、精神状態も向上するでしょう。
適切な衛生管理とは
適度な”不衛生”を受け入れる一方で、基本的な衛生管理を怠るべきではありません。
いき過ぎずない適度な衛生管理のポイントは以下の通りです。
いき過ぎない基本的な衛生管理
- 帰宅後や食前の手洗い:昔ながらの”石鹸”は、過度に除菌せず汚れを落としてくれる優れモノ。
- 抗菌薬の正しい使用:医師の指示に従い、不必要な使用を避ける。特に抗生物質は腸内菌をほとんど殺してしまうため、使用には注意を。
- 適切な掃除習慣: 家庭内の清潔を保ちながらも、過剰な除菌を控える。ただし”カビ”は人体にもよくないので、積極的に清掃や空気の入れ替えを。
これらの習慣を守りながら、過度な抗菌を避けることで、健康的な生活を送ることができるでしょう。
まとめ
私たちは歴史を通し、抗菌や殺菌を通じて健康を守る方法を追求してきました。
しかしその結果、現代の過度な衛生管理は、逆に健康を損なうリスクをもたらします。
腸内細菌叢をはじめとする微生物との適切な共生を図ることで、免疫力を高め、心身の健康を保つことができます。
“不衛生であれ”という言葉は、決して清潔さを軽視するものではありません。
むしろ、適度な菌との共生を意識しながら健康を追求する視点です。
ぜひ、日常生活で適度な”不衛生”を受け入れ、より豊かな生活を目指しましょう。