毎日必死に働いて収入を得ているのに、なかなか幸せを実感できない。
そんな思いを抱えている方は少なくないでしょう。
プリンストン大学の研究によると、年収が一定額を超えると幸福度はそれほど上がらないことが分かっています。
つまり、重要なのは「いくら稼ぐか」ではなく「どう使うか」なのです。
この記事では、行動経済学の知見をもとに、幸福度を高めるお金の使い方を解説します。
なぜお金の使い方で幸福度が変わるのか
幸福は収入では買えない?
世の中には「高収入=幸せ」と信じるひとが多くいます。
しかし行動経済学の研究では、年収750万円を超えると収入の増加が幸福度に与える影響は小さくなることが示されています。
つまり、年収750万円までは収入増加と幸福度には相関関係が見られますが、それ以上を稼いでも幸福度の観点からは頭打ちになるということです。
もちろん家族構成や個人の感じ方によって大きくバラつきはあるでしょう。
一方で、仮に年収が750万以下でも以上でも、限られた収入を「どのように使うか」で幸福度を劇的に変えることができます。
この「支出の質」が、私たちの生活満足度を左右する大きな要因にもなります。
- 行動経済学の観点からは年収750万円までは年収増加と共に幸福度は上がるが、それ以上は上がりにくい
- 年収とは別に、”お金の使い方”を工夫することで幸福度を劇的に上げられる
お金を「幸せのための道具」として活用する
では幸福度を上げるお金の使い方とは、どのようなものでしょうか。
その使い方にはいくつかの抑えるべきポイントがあります。
- 経験への支出
- 小さな贅沢を楽しむ支出
- 他者への支出
- 時間を買う支出
これらを実践することで、支出額に見合った、もしくはそれ以上の幸福感を引き出すことができるでしょう。
幸福度を高める具体的な支出方法
どのようなお金の使い方が幸福度を高めてくれるのか、ここから具体例や参考価格と併せて詳しく見ていきましょう。
1. モノよりも経験にお金を使う
物質的な購入よりも経験への支出が幸福度を高める理由は、精神的に得られる満足感の持続性が高いことです。
例えば、新しいスマートフォンを買った時の喜びは買った瞬間をピークに次第に薄れ、一週間も経てば慣れてしまうことも少なくありません。
試しに、最近で一番興奮した買い物を思い浮かべ、今その物に感じる魅力度は薄れていないか、実感してみてください。
一方、友人との旅行や新しいことへ挑戦し経験した記憶は、驚異的な持続力で満足感をもたらします。
過去に楽しんだ旅行や頑張ったこと、今思い返しても「あれは本当にやって良かった」と思えるのではないでしょうか。
実践例
- 週末の小旅行(予算:2〜3万円)
- 新しい趣味や習い事の開始(月額:1〜2万円)
- 友人や家族との特別な時間を作る(予算:5千円〜1万円)
- コンサートやワークショップへの参加(予算:3〜5千円)
2. 小さな贅沢を定期的に楽しむ
ハーバード大学の研究によると、定期的に体験できる小さな喜びが、人生全体の幸福度を高めることが分かっています。
例えば、月に一度の特別なスイーツや、美味しいお店の大好きな食べ物。
そんな日常生活の中でたまに行う少しの贅沢が、仕事の疲れやストレスを軽減してくれます。
ここでのポイントは、その小さな贅沢が日常になってしまうほど頻繁にしないこと。
贅沢も日常になってしまえば慣れてしまい、特別感と幸福感は失せてしまいます。
そして定期的に行うためには、一回当たりのコストが膨大すぎないのがいいでしょう。
実践例
- 毎週末にお気に入りのカフェで高品質なコーヒーを楽しむ(予算:1千円)
- 月に一度のご褒美ディナー(予算:3千円)
- 月に一度のマッサージやスパ(予算:1万円)
3. 他者への支出がもたらす幸福感
他者のためにお金を使うことは、自己肯定感やつながりを強め、幸福感を高める効果があります。
また、それがどんなに少額でも他者への支出は「他者のために使えるお金がある」という潜在意識を養い、お金の不安感そのものを小さくするのに役立ちます。
例えば、家族や友人にプレゼントを贈ったり、寄付を行ったりすることが有益です。
金額の多寡ではなく、他者への支出の機会そのものを増やすことが効果的です。
定期的に支出する仕組みを作ってもいいでしょう。
実践例
- 友人や家族へのプレゼント(予算:1千円~5千円)
- 食事のおごりや感謝の気持ちを表すギフト(予算:5千円〜1万円)
- 慈善団体への定期的な少額寄付(月額:百円〜2千円)
※寄付金の用途を明白にしている団体を選定する
4. 時間を買うための投資
現代の忙しい生活では「時間を買う支出」が幸福度向上に直結します。
時間を節約することで余裕が生まれ、ストレスの軽減と幸福感の向上が期待できます。
そうして生まれた時間は別のことで忙しくするのでなく、趣味や休息、リラックスすることに充てることがポイントです。
実践例
- 家事代行サービスの利用(月額:1〜2万円)
- 食材宅配サービスで買い物時間を節約(週額:5千円)
- 食洗器や乾燥機能付き洗濯機など、時短家電への投資(初期投資:2~20万円)
- 通勤時間を短縮するための引っ越し(初期投資:50〜100万円)
5. 将来の不安を減らす貯蓄と投資
こちらは厳密には”支出”とは異なりますが、“将来の不安軽減”を買っているという考え方です。
貯蓄や投資は、将来の不安を軽減するだけでなく、日常においても心の余裕を生み出します。
どんなに幸福度の高い支出を増やしても、貯蓄と財布の中身がゼロで明日の生活も未知である経済状況は幸福度を低下させてしまうでしょう。
資産を大きくすればするほど将来への耐性が強まり、将来の不安が少なくなれば自然と”今”に集中できます。
特に、目的に応じた計画的な資産形成は、現在の幸福感にも良い影響を与えます。
実践例
- 給与の20%を自動的に貯蓄する仕組みを作る
給与受取りと同時に一定額を別口座に移す、先取貯蓄が有効 - 3〜6ヶ月分の現金を生活費を緊急資金として確保
- 目的別の資産形成口座を開設(旅行、教育、将来の生活など)
- 少額から始める長期投資(月額:1〜3万円)
6. 衝動買いを防ぐ工夫
前述もしていますが、物的欲求からくる物への支出は幸福度が長続きしにくいものです。
その中でも特に、“衝動買い”は刹那的な満足感しか得られず、後悔を招くことも多くあります。
物への支出自体はゼロを目指す必要はありませんが、“衝動買い”はゼロを目指しましょう。
そのためには有効なのはルール作りによる工夫です。
計画的な支出を心がけることで、無駄遣いを防ぎましょう。
実践例
- 欲しい物は購入前に24時間以上考えるルールを設定
※特に高価なものはルール厳守を徹底し、検討時間も伸ばす - 買い物前は事前に買い物リストを作成し、それに従う
- クレジットカードの利用額を制限
- 過去の衝動買いのパターンや状況を分析し、同じ状況を作らないようにする
幸福なお金の使い方を始めるには
いくつかの具体例を交え、幸福なお金の使い方を紹介しました。
あくまでも行動経済学による一般論で、実際には個人によって幸福の感じ方は多種多様かもしれません。
大切なのは実際に自分の支出と幸福度の関係に注意を向け、観察してみることです。
まずは幸福度がさして高くない支出を減らし、その削減した支出をここで紹介した幸福な支出に充ててみてください。
もちろんすべてを実践する必要もありません。
ひとつひとつ試してみて、自分なりの最適解を見つけ出していきましょう。
さいごに
お金の使い方を見直すことは、単なる家計改善ではなく、人生そのものを豊かにするための重要なステップです。
この記事で紹介した方法を参考に、今日から小さな変化を始めてみてください。
幸福度を高めるお金の使い方は、日々の選択と行動にかかっています。
あなたの支出が、より満足感と幸せをもたらすものになるよう、この記事は役に立てば幸いです。